船橋市本町2丁目10番14号
    成田高速鉄道アクセス株式会社 
施設計画部施設計画課 御中

                    平成17年1月15日
                    千葉県自然観察指導員協議会
                               代表 市川清忠
                    事務局所在地 千葉市若葉区桜木町2-122
                               石嶋基次 方

成田新高速鉄道線建設事業に係る環境影響評価準備書に対する意見書
1. 鉄道敷設地域周辺の環境について
 環境影響評価準備書に記述されているように、成田新高速鉄道線の敷設される地域は鳥類に限ってみても、千葉県レッドデータブックの最重要保護鳥類および重要保護鳥類が次のように多数生息している。
最重要保護鳥類(A):
サンカノゴイ、ヨシゴイ、ウズラ、クイナ、ヒクイナ、タマシギ、ケリ、アマツバメ、オオジシギ、オオセッカ、コジュリンなど
重要保護鳥類(B):
チュウサギ、トモエガモ、ヨシガモ、ミサゴ、オオタカ、ツミ、ハイタカ、サシバ、チュウヒ、ハヤブサ、イソシギ、セイタカシギ、コアジサシ、コミミズク、アオバズク、フクロウ、キビタキ、オオルリなど
さらにこれらの野鳥は全国的にみても、以下のように環境省のレッドデータブックに絶滅危惧種として登録されている。
絶滅危惧檻類(EN)サンカノゴイ、オオセッカ、セイタカシギ、
絶滅危惧類(VU)クジュリン、トモエガモ、オオタカ、チュウヒ、ハヤブサ、コアジサシ
準絶滅危惧(NT)オオジシギ、チュウサギ、ミサゴ、ハイタカ
このように千葉県内のみならず全国規模でみても保護鳥類が生息している地域である。
 なかでもサンカノゴイは全国的に個体数の少ないサギで、当該地域で毎年繁殖しており、日本全国でも唯一の継続繁殖地といわれている所である。計画路線はこのサンカノゴイの繁殖地を分断するように計画されているため事業の影響が懸念される。

2. 環境保全措置について
 準備書によれば、一部のサンカノゴイの生息環境に影響が予測されると明記され、措置として防音壁を設置することで、影響を低減させると記されている。また生息地の分断に関しては、防音壁の設置等により、生息環境の保全を図ることで、「千葉県環境基本計画」の施策に整合しているので、分断してもかまわないと評価されている。
 オオタカやサシバなどの猛禽類については、狩場の消失による影響が予測されるが、改変された狩場環境に適応できるように土地改変を徐々に行うと記されている。
 湿地性希少鳥類に対しては、生息場所としてヨシ原を造成することにより新たな生息場所を創出すると記されている。
 以上のような環境保全措置により、環境影響を回避または低減できると判断して本計画は遂行できると結論づけている。
 しかしながら、これらの措置で回避または低減できると判断される科学的根拠は何も示されておらず、まったく説得力がなく、これらの措置が有効であるとは容認しがたい。環境を大きく破壊して取り返しのつかないことになるリスクの方が大きいと思われる。

3. 事後調査について
 鉄道供用後2年間調査を行い、サンカノゴイに対する防音壁設置の効果の確認、猛禽類に対する土地改変の効果の確認、湿地性希少種に対するヨシ原設置効果の確認などを行うと記されている。しかし、これらの鳥類に対する影響の程度をどのような点から評価されるのか、判定基準が明示されていない。またこれらの措置の効果が不十分だということになったとき、どうするのか何も書かれていない。既に手遅れであることは明白である。着工前に効果をテスト確認されない限り、リスクが大きすぎて、有効な措置とはいえない。

4. 計画の見直し
 本事業の目的は都心と成田空港までの交通の便を現在より時間短縮するというものである。現在はJR東日本と京成電鉄が約50分台で走行している。計画によれば、新高速鉄道では30数分で走るといわれている。この10数分の短縮が大きな環境破壊のリスクを犯し、多大な経済投資をしてまでやるような重要な事業なのかまったく理解できない。また今後、若者の人口の減少化を考慮すると、現行路線と競合して、計画高速鉄道は赤字路線になることも十分に予想される。まず経済投資効果を十分に見直してほしい。それでも鉄道の投資効果が期待されるときは、環境影響がもっと少ないルート(サンカノゴイの生息地を分断しないルート)を再検討してほしい。
                                       以上